薬害とヒューマニズム 薬害被害者の声を聴く


 去る8月31日、薬学部4年生を対象に「薬害とヒューマニズム(2)薬害被害者の声を聴く」を開催した。この授業は第4学年薬学専門科目「医療倫理とヒューマニズム」の終盤で行われ、薬害被害者の増山ゆかりさんの講演を拝聴し、その後、助産師を志望する看護学部生と薬学部生の合同で小グループ討議が組み込まれている。

 昨年度に引き続き、コロナ禍のため増山さんの講義はオンラインで開催したが、本年度は事前に薬害に関する知識を授業で学び、さらに増山さんの生い立ちに関する動画を視聴した。その上で、薬害とは何か?原因は何か?なぜ繰り返されるのか?などを事前アンケートで考え、増山さんの授業に望んだ。授業の前半は、アンケートの回答に関して増山さんから追加説明があり、後半は学生の質問を中心にやり取りを行った。学生の素朴な質問に対し、増山さんはとても丁寧にそして率直に回答してくださった。

 薬害は薬の関わる人々や企業の不誠実さによる人災であること、医学研究の進歩は患者の犠牲の上に成り立っていること、薬害の被害は本人だけでなくその家族までも巻き込んでいくこと、障害者をとりまく世界が日本と外国ではまだまだ大きな差があること、など、薬学生たちへの明確なメッセージに溢れる授業であった。

 そして、「生まれてきて良かった、生きてきて良かった、と思うような人生を歩むことが薬害への自分なりのリベンジだ」、「(したいことを聞かれて)食べたいものではなく、食べられるものを食べる。着たいものではなく、着られるものを着る。」など、増山さんの言葉ひとつひとつが学生たちの心に響いたようだ。

 合同討議では、看護学生、薬学生の視点の違いに気がつき、患者が薬を飲む現場に薬剤師が立ち会っていないことや多職種間でコミュニケーションや連携が重要であることが話し合われていた。さらには、増山さんのポジティブに明るく人生を歩む姿勢に共感していた。

文責:高橋寛(地域医療薬学分野教授)

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