WHOによると、2050年には、既存の抗菌薬が効かない薬剤耐性菌感染症による死者数が、
がんによる死者数を上回ると予測されており、新たな作用機序を有する抗菌薬の開発が急務となっています。
岩手医科大学薬学部構造生物薬学分野では、2011年よりJAXAとの共同研究を開始し、
SBDD(Structure-Based Drug Discovery:構造ベース創薬)という手法を用いて、
新規作用機序による抗菌薬の開発を進めています。
このたび、本学研究チームが準備した実験試料が、2026年5月16日7時5分(日本時間)、
米国SpaceX社のドラゴン補給船(SpX-34)により国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられました。
試料は5月18日にISSに到着し、宇宙飛行士によって「きぼう」日本実験棟内の冷凍・冷蔵設備に設置され、実験が開始されました。
「きぼう」日本実験棟の微小重力環境では対流が抑制されるため、高品質なタンパク質結晶の生成に適した環境が得られます。
今後、温度制御を行いながら結晶成長を進め、6月中旬に実験試料を地上へ回収する予定です。
現在では、多くの新薬開発においてSBDDが活用されており、抗がん剤、抗ウイルス薬および糖尿病治療薬などの
分子標的薬開発において重要な創薬基盤技術となっています。
SBDDは、疾患に関与する標的分子(主としてタンパク質)の立体構造情報に基づいて、化合物を探索・設計する創薬手法です。
新型コロナウイルス感染症治療薬であるPaxlovid(ニルマトレルビル/リトナビル)に含まれる成分や、
インフルエンザ治療薬であるタミフル、リレンザなども、SBDDを活用して開発された医薬品として知られています。
疾患標的タンパク質の立体構造を解析する手法はいくつか存在しますが、
その中でも、化合物設計に必要な標的分子と化合物との相互作用情報を高精度に取得できる手法が
X線結晶構造解析で、高品質なタンパク質結晶を得ることが極めて重要となります。
詳細は、下記のページをご覧ください。
NASA Benefits for Humanity P165
JAXA 高品質タンパク質結晶生成実験 PCG (Protein Crystal Growth)