生体防御学分野では、生物に本来備わる「防御のしくみ」を研究し、
健康に生きる術を探っていきます。

生体防御学分野では、生物に本来備わる「防御のしくみ」を研究し、健康に生きる術を探していきます。生体防御とは病原微生物への防御にはとどまりません。環境の変化や様々なストレスを含む「未知の何か」に遭遇したとき、生物はどのような能力をもって、それに対処し克服していくのか、そのしくみを私たちは広い意味での「生体防御」と捉えています。現存する生物たちは、何かしらの「防御のしくみ」を発達させてここまで生き延びてきているはずです。その能力を見いだしていくことが分野の使命であると考えています。
一般には、「薬学部は薬について研究するところ」と、思われています。私たちの研究室では、健康でいられるように働いている「防御のしくみ」をまず明らかにすることに主眼をおいていますので、薬とは関係ないのでは?と思われるかもしれません。実は「防御のしくみ」によって、薬は異物や有害物質とみなされて、生体から排除されてしまうことがあります。「防御のしくみ」を明らかにしていくことは、薬をどのようにして効果的に体に送り届けるか、にも関わってくる研究なのです。

研究成果・実績

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  • 線虫の腸細胞内オルガネラ形成に対するp97線虫ホモログの多系統蛋白質 症関連変異の影響
  • 盛岡で単離された線虫(O. tipulae)に感染する新種微胞子虫 Percutemincola moriokae
  • 線虫の加齢に伴うHEBE顆粒の変化における生殖腺の影響の解析

主な研究内容

  1. 生体防御の進化に関する研究
    薬物排出/抗原提示に働くABC輸送体ファミリーの線虫における生理機能
    補体系因子C3及び膜受容体ファミリーの線虫における生理機能
  2. オルガネラ形成異常の分子機構の研究
    新規リソソーム関連オルガネラの形成・成熟に関わる遺伝子群の網羅的解析
    オルガネラ形成異常を生じる変異体におけるプロテオーム解析
    新規リソソーム関連オルガネラの形成・成熟に関わる栄養分子の同定
  3. 環境適応とストレス応答に関する研究
  4. 細胞内薬物送達の基礎研究
主な研究材料 線虫 C.elegans
主な研究手法 細胞生物学、分子生物学、遺伝学、生化学

担当講義

微生物学 (2年前期)
細菌・ウイルス・真菌・寄生虫などの微生物の分類・構造・増殖機構・生活環・宿主への感染機構に関する基本的知識を修得します。また、代表的な細菌毒素の作用や、微生物の検出法、消毒・滅菌法についても学びます。 大橋、錦織
免疫生物学1 (2年後期)
病原体や異常細胞による自己組織の破壊から生体を守り恒常性を維持するための仕組みである免疫系に関する基本的事項を学習します。免疫系を担う様々な組織や細胞、そして抗体や補体、サイトカインなどの免疫に働く分子について学びます。 大橋
薬学実習1(微生物学実習) (2年後期)
滅菌・消毒、微生物の取り扱い方、代表的な細菌の同定法、微生物の遺伝子伝達法の基礎知識と技能を修得することで、感染症の予防や化学療法に応用するための基盤を形成することを目的としています。また、抗原抗体反応を利用した微生物の検出方法についても実習を通じて学びます。 大橋、白石、錦織
薬学英語2 (2年後期)
薬学に関連した学術誌・雑誌・新聞の読解、および医療現場・研究室・学術会議などで必要とされる実用的英語力を身につけるために、科学英語の基本的知識と技能を学びます。 白石
基礎総合講義2 (2年通期)
大橋
早期臨床体験:医療人としてのヒューマニズム  (2年通期)
臨床に関わる様々な事象を体験・討論・グループワークを通して学び、考えます。 大橋、白石、錦織
免疫生物学2 (3年前期)
免疫系の正常な応答とそれを支える分子基盤、免疫系の破綻がもたらす疾患、ならびに研究や臨床への免疫反応の応用について学びます。 白石
応用生体防御学 (3年後期)
これまでに修得した、微生物学や免疫学などの知識を基盤として、①微生物をはじめヒト以外の生物がもつ生体防御のしくみやその応用、②微生物とヒトとの相互作用(共生・寄生)、③免疫反応や免疫関連分子の臨床応用(予防接種や抗体医薬)、④iPS細胞などの細胞を用いた医療におけるHLAの重要性などについて学びます。 大橋、白石、丹治、錦織
薬学英語3 (3年後期)
医薬品関連文書の読解や生物学関連の英語の動画を視聴を通じて、薬学の専門家になるために必要な英語力を高めます。 大橋
医療倫理とヒューマニズム (4年通期)
現代医療が直面している倫理的な問題を具体的に理解し、日本の医療の現状に対して自分なりの見解や心構えをもつことを目指します。 大橋
総合薬物治療演習 (4年通期)
4年間の薬学教育の復習とまとめを通して各科目の知識と技能を統合し、薬物治療に関する能力を身につけます。 大橋、白石
卒業研究1 (4年通期)
研究室に配属し、研究を行いながら実験機器・器具・試薬・動物などの取り扱いを学びます。また、主体的に研究を遂行する上で必要な論理的な思考力や他の人と協調して研究を進めるチームワークの精神を養います。 大橋、白石、錦織
卒業研究2 (5、6年通期)
卒業研究1で学んだ基礎的な技術や知識を活かして、より専門的な研究を行い、問題解決能力や社会的な協調性を養成します。また、研究セミナーでの発表や研究成果のポスター発表、卒業論文の作成を通して、実験結果のまとめ方やプレゼンテーションを行う能力を身につけます。 大橋、白石、錦織
総合講義 (6年通期)
白石、錦織
総合演習 (6年通期)
白石
自由科目 遺伝学に親しむ (2-3年後期、隔年開講)
遺伝子診断法やテーラーメード医療の進展に伴い、薬剤師にとって遺伝学の基礎を身につけておくことは重要となってきています。本実習では、遺伝学の優れた教材である線虫を用いた実験を通じて、遺伝子型と表現型及びそれらの関係について学びます。 大橋、白石、錦織
自由科目 遺伝子導入技術を学ぶ (2-4年前期、隔年開講)
遺伝子の導入による遺伝子治療は、なお有効な治療法が確立されていない多くの疾患に対して治癒をもたらす可能性を秘めています。本実習では、モデル生物である線虫に対する緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の導入を実践し、個体への遺伝子導入の手法や導入率の評価方法を学びます。 大橋、白石、錦織

メンバー

 

教授

大橋 綾子
昭和62年 東京大学薬学部薬学科 卒業
平成4年 東京大学大学院薬学系研究科生命薬学専攻 博士課程修了 博士(薬学)
日本学術振興会 特別研究員(DC/PD)、仏国パスツール研究所  WHO/TDR博士研究員、東京大学大学院薬学系研究科 助手、大阪大学大学院薬学研究科 講師を経て現職
日本薬学会代議員、日本薬学会東北支部役員、日本生化学会評議員

特任教授

白石 博久
平成8年 東京大学薬学部製薬化学科 卒業
平成13年 東京大学大学院薬学系研究科機能薬学専攻 博士課程修了 博士(薬学)
国立長寿医療センター 博士研究員、日本学術振興会 特別研究員、南カリフォルニア大学 博士研究員、本学薬学部 生体防御学講座 講師・准教授を経て現職
助教 錦織 健児
平成15年 神奈川大学理学部応用生物科学科 卒業
平成17年 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 修士課程修了
平成21年 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 博士課程修了 博士(理学)
本学薬学部 生体防御学講座 助手を経て現職

非常勤講師

当研究室創設初年度より13年間在籍し、研究および教育の両面においてご活躍されましたが、2020年4月より医療創生大学薬学部に転出されました。

丹治 貴博
平成10年 東京大学薬学部薬学科 卒業
平成15年 東京大学大学院薬学系研究科機能薬学専攻 博士課程修了 博士(薬学)
マサチューセッツ大学医学部 博士研究員、本学薬学部 生体防御学講座 助手、助教
令和 2年 医療創生大学薬学部 准教授