Dr OZくすりのよもやま話(14)

くすりの効き方の不思議さ・面白さ・・・(1) 令和3年4月14日

くすりが関係することを思い出すために自分の人生を振り返り、25歳の折、友人たちとスキーをしている最中に起きた自分の体調の異変の思い出、のように書きました。

実は、その体調の異変は全く初めてではないどころか、一週に一回という頻度で感じてはいました。ただ、その時に経験した症状は最も強いものでした。さすがに私も少々慌てまして、帰京後ただちに本学で言えば健康管理センター(私が所属していた大学では保健センターといっていたと思います)で、たまたま医師の診察を受けることができ、投薬をいただきました。

結果的に自分自身の体に関して新たな発見をしたので、今回のシリーズは「くすりの効き方の不思議さ・面白さ」と題することにしました。

なかなか具体的な症状が出てきませんが、言葉だけで表現すると、“大丈夫なのか“とお感じになるかもしれませんし、似たような症状を感じられている読者がおられることも十分ありうるので不要なご不安を与えることにならないように、と願い、二の足を踏んでいます。気になる症状を感じていらっしゃる場合は、医師の診察を受けて頂きたいと思います。

意を決して書きますと、突然の頻脈(突然心臓の鼓動が速くなる)です。
保健センターでの診察で、先生に尋ねられたことの一つは「脈拍数はどれくらい速いの?」、ほかは、「どんなときに経験するの?運動している時?」が含まれていますが、いまではすべてをよく覚えているわけではありません。しかし、あとになって振り返ると脈拍数や経験する時期についての問いは、診断上相当重要なことだったのだと思われます。私の回答は、脈拍数は1分間にだいたい170前後で、走っている最中といった負荷が大きい運動時には起こりません、でした。スキーの時は?と聞かれましたので、斜面を滑り終えてリフトの順番待ちをしているときでした、と答えました。

脈拍数に少し触れます。私は、大学1年~2年のころは夏スキーも含めて年がら年中スキーをやっていまして、それに備えたトレーニングをしていました。正課の体育の授業には、12分間走というトレーニング種目?があり、これは12分間にどれくらいの距離を走れるか、で、3,000メートルに達するか達しないあたりが最高記録だったと記憶しています。走り終えた直後の脈拍数もとっており、ゼーゼーいいながら、10秒間だけ測り、32拍/10秒でした。周りにすごい人がいっぱいいて、3,200メートル超走った人もいました。それで、192/分と答えたら、監督の先生から、「おまえら、そんなに無理すんな!」と叱られました。30歳になったころの勤務先に医師がいましたので、この話をしたら、「その脈拍数はほぼ限界」と言われました。こういうことも実体験しているので、ほぼ安静時に脈拍数が1分あたり170になるのは相当な頻拍だな、とは思っていました。

結局先生は、2種類の錠剤を提示されました。
1つは不整脈の治療薬で、もう1つはいまで言う抗不安薬です。先生は2つの薬の一般名を示しつつ、「薬学部の大学院生ならこれらが何だかわかるだろ。」とおっしゃいました。幸い、一応どちらの一般名も知っていました。さて、心臓の鼓動が突然速くなるのに対して不整脈の治療薬を出すのはよくわかる気がしました。しかし、いまでいう抗不安薬は脳に作用するくすりでしょう、どうしてこれが効く可能性があるのですか?などと質問すべきです。当時はこれらのくすりが何であるかがかろうじて分かったことでホッとしすぎてこのように質問することはできませんでした。

次いで先生は、1錠ずつのんでみて、どちらが発作を起こりにくくするかがわかればよいし、両方同時にのまないとだめか、とか、薬学部の大学院生で研究をやっているんだろうから、いろいろ自分でやってみな?と言われ、このことはよ~く覚えています。ともあれ、不整脈治療薬とマイナートランキライザーを試すことになりました。(私は当時、「抗不安薬」ではなく、「マイナートランキライザー」と記憶していまして、先生から渡されたくすりの1つは、“これはマイナートランキライザーだ”、と思いました。)

いまでもマイナートランキライザーというのか、というのも気になり、Google検索しましたら、一般的な術語のようです。ただし、薬学部で「薬物動態学」や一部「医薬情報科学」を担当する教員としては、「医療用医薬品添付文書」をみたいところです。

現在の医薬品添付文書をみると、不整脈の治療薬だ、と思った薬の【効能・効果】は、本態性高血圧症、狭心症、期外収縮(上室性、心室性)、発作性頻拍の予防などが書かれています。マイナートランキライザーと思った方の薬の【効能・効果】は、神経症における不安・緊張・抑うつ、心身症(消化器疾患、循環器疾患、自律神経失調症、等)、ほか、があげられています。

それではどちらが効くのだろう、と半ば不安、半ば自分でくすりの効き方を把握し、理解するのだ、というある種の好奇心にもかられた記憶があります。

さて、どちらが効いたのか、それは次回に。

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