Dr OZくすりのよもやま話(3)

くすりがいきなり効きすぎた! その3

グレープフルーツの影響はどれくらい続くのか

きちんとした証明をするのは大変です。この疑問にピッタリの題名の論文をみつけました。

「グレープフルーツジュース1回飲用の影響からの回復の時間経過」というものです。

米国・マサチューセッツ州にあるタフツ大学の研究グループが25人の健康な志願者(男性21人、女性4人、年齢20歳~46歳)に参加してもらって調べています(参考文献1)。グレープフルーツジュースの影響があることが分かっている催眠薬をのんでもらった研究です。多かれ少なかれ、くすりは小腸から体内に吸収されつつ少し分解され、さらに肝臓の働きでもっと多くの量が分解されます。最後は主に尿に溶けて体外へ出ます。グレープフルーツジュースは、小腸でのくすりの分解をおさえてしまうので、体の中にくすり、この場合は睡眠薬が多量に入ることになります。

初日    25人が催眠薬を服用後、血液検査で体内に存在する睡眠薬の量を測った。

3日目   グレープフルーツジュース (300 ミリリットル)を飲んでから2時間後に催眠薬を服用し、血液検査で体内に存在する睡眠薬の量が増えているのを確認した。

グレープフルーツジュースはのんだ睡眠薬が体内に存在する量を増やしました。これは睡眠薬を多くのんだのとほぼ同じことが起きることを意味します。血液検査から、睡眠薬の体内に存在している量はグレープフルーツジュースをのまないときのおおよそ1.65倍になりました。

ここで志願者25人を7人、9人、9人の3つのグループに分けています。

3日目に飲んだグレープフルーツジュースの影響が、この後どれくらい続くのかをみています。

4日目               グループ1の7人が催眠薬を服用し、血液検査で体内の睡眠薬量を測定。

5日目               グループ2の9人が催眠薬を服用し、血液検査で体内の睡眠薬量を測定

6日目               グループ3の9人が催眠薬を服用し、血液検査で体内の睡眠薬量を測定

 

さて、グレープフルーツジュース飲用当日(3日目)の睡眠薬の体内量は飲用しないときの1.65倍ということですが、4日目、5日目、6日目の値はどうなのでしょう。まとめましょう。

 

3日目               1.65倍(グレープフルーツジュース飲用当日)

4日目               1.21倍(飲用翌日)

5日目               1.21倍(飲用2日目)

6日目               1.06倍(飲用3日目)

 

この研究を行ったグループは、グレープフルーツジュースの影響からの「回復」はおおよそ3日以内に完了する、と言っています。科学的には「回復」という言葉がより正確なのですが、グレープフルーツジュースの影響はおおよそ3日以内に消失する、でも構いません。私のグレープフルーツ食用の場合の5時間後では、影響は全く消えないと言ってもいいくらいですね。

ここでまた知りたいことがでてきました。私がうっかり食べてしまったグレープフルーツと、グレープフルーツジュースの間にはどのような違いがあるのでしょうか。これは意外と奥が深い問題で、いろいろと調べてもどちらがくすりの効き目などに強い影響を及ぼすか、簡単に答えは出てこないかもしれません。でも、がんばってできるだけわかっていることを調べてみましょう。それはまた次回に。

 

参考文献1(米国臨床薬理学会の雑誌です)

Greenblatt DJ ら、Clinical Pharmacology & Therapeutics 2003;74(2): 121-129.

Dr OZくすりのよもやま話(4)へ

Dr OZくすりのよもやま話(2)へ

一覧に戻る